伝統が息づく和柄バッグづくりの物語
バッグに込められた染めと柄の秘密
さて、バッグに使用する素晴らしい生地にはたどり着きました。
次の問題は、柄と色の染めをどうするかです。そうかといって私はバッグ作りの専門家
ではありません。そこではじめに考えた、「着物を守るとは何か。自分の店だけではなく、日本の伝統工藝技術を守るとは何か。」という原点に返って考えることにしました。
着物が売れなくなって、困っているのは小売屋さんだけではありません。
染め屋さんや職人さんたちも受注減で厳しい状況にあります。
そういった中でも、若者が着物の染色に興味を持ち工房に体験入学する姿には、ある意味希望を感じました。
しかし伝統工藝士になるための長い修行期間の途中に挫折する人も多いという現実もあります。
こうした後継者問題は、日本独自の技術の衰退につながりかねません。
そこで考えたのが、きものという形に縛られずに、染めの技術を別の形で生かすこと。
それをバッグに取り入れれば、職人技の新しい需要を生み、伝統を未来へつなげる一助になるはずと考えました。
しかし商品化にはリスクがあります。独自色や派手な柄に偏ると、好みがはっきり分かれ、販売に苦戦する恐れがあります。
「江戸小紋」の染めの技術を選んだ理由
そこで呉服屋としてひらめいたのが・・・、
経済産業大臣認定の伝統工藝品として知られる「江戸小紋 」のもつ染色技法です。
色や柄を弊社独自色の強いものにして打ち出していくと、バッグを購入する人の好みによって、「すき、きらい」がはっきりと出てしまい、売れない商品になってしまうと高いリスクを抱えてしまう問題が発生してしまいます。
そこで浮かんだのが、経済産業大臣認定・伝統工藝品「江戸小紋」です。
美濃和紙に柿渋を塗る事により耐水性が強くなった和紙に、彫刻刀で柄を彫る型紙職人によって、ものすごく細かい柄を彫られた型紙を、東京の伝統工藝士の職人さんによって染められていくという、まさに日本の伝統の匠の技により生まれたのが「江戸小紋」の染色技法です。

その特徴は、遠くから見ると色だけの無地に見えて、近くに寄ってみると柄があるという豊かな表現を持つまさに日本職人の技です。
これならば、バッグの色と柄の染めにも適しているし、弊社の思いである「着物にとらわれず、形を変えてでも日本の伝統工藝技術を守る」という私達の考えに添うものと考えました。

しかし、ここでひとつの問題点が出てきました。弊社の生地には「かみのいと®」が配合されているために、普通の染料では思ったように色に染まらない事です。試作品を作るために、紺色に染めてくださいと京都の染屋にお願いしても、出来上がりは水色。「これ以上は染まりません」との返事。
しかし、ここでまた新たな挑戦が・・・
弊社の生地には 「かみのいと®」 が配合されており、一般的な染料では希望の色が出にくいという問題が出ました。
試作品で紺色を依頼したところ、仕上がりは水色。染め屋さんからも、これ以上は染まらないという返事が…苦い経験でした。
そこで江戸小紋の染屋さんで、弊社の生地を染める技術を持っている染屋さんはないものかと必死に探しました。数ある江戸小紋染めの染屋さんから、反応染料という特殊染料を使って何にでも染めることのできる江戸小紋染めの工房を探し出し、そこの社長様に弊社の目的を説明したところ、染めて頂ける事を快諾して頂きました。
今思い返しても、言葉では言い表せないほど感謝しています。
そして、色と柄の最終決定へ
工房を訪れ、大量にある型紙の中から厳選して3種を選び取り、色合わせはプロダクトデザイナーの先生と何度も議論。最終的に、3タイプの色と柄の組み合わせ が決定しました。
次回はこの染め上がった生地を使って、バッグの「縫製」をどうするのかについて、お話をします。