バッグの縫製に込められたK-iwamiの思い
― 縫製職人とともに歩むという選択 ―
K-iwamiのバッグは、流行から生まれたものではありません。
「売れそうだから」「バッグ市場が伸びているから」――そんな理由で始めたわけでもありません。
その出発点にあったのは、呉服屋として長年着物に向き合ってきた中で、どうしても消えなかった想いでした。
「着物を守るとは、いったい何を守ることなのか」
「日本の伝統工藝を守るとは、形なのか、それとも技なのか」
考え続けるうちに、はっきりしてきたことがあります。
守るべきは“モノ”そのものではなく、その背景にある人の技術と心だということです。
そしてその想いは、やがてバッグづくりへとつながっていきました。
無知から始まった、必死の勉強
正直に言えば、バッグの縫製についてはまったくの素人でした。
業界のことも分からなければ、どこに相談すればいいのかすら、手探りの状態。
それでも、「やる」と決めた以上、前に進むしかありません。
思いつく限りネットで調べた会社に電話をかけ、教えを請い、ときには失礼を承知で質問もしました。
今振り返れば、本当に多くの方に助けていただきました。
あのとき丁寧に応対してくださった皆様には、今も感謝の気持ちしかありません。
そんな中で、いまでも、ある東京のバッグ縫製会社の専務さんから聞いた話が、私の胸に深く刺さっています。
「最近は縫製賃の安い海外に出す会社が多くて、日本の熟練職人の仕事は減っています。しかも高齢化も進んでいているし…」
その言葉を聞いた瞬間、頭の中で何かがつながりました。
それは、着物の世界で起きていることと、あまりにも似ていたからです。
「縫う」という、日本人の感覚

私は本業である呉服屋として、長年仕立ての現場を見てきました。
まっすぐな縫い目の中にある微妙な“ゆとり”。
布を傷めないための力加減。
目には見えにくいけれど、確かに存在する職人の感覚。
それは単なる作業ではなく、**経験と身体感覚が積み重なった“技”**です。
だからこそ思ったのです。
バッグの縫製職人さんたちの手にも、同じように積み重ねられた技術が宿っているはずだと。
その技術が、仕事の減少と高齢化によって、静かに失われつつある。
この現実を知ったとき、私の中で迷いは消えました。
K-iwamiのバッグは、日本の職人さんに縫ってもらう。
それが私たちの出発点であり、揺るがない軸になりました。
理想だけでは、ものは作れない
ところが、いざ動き出すと現実は厳しいものでした。
縫製をお願いできそうな会社を探し、染め上がった生地の原反をリュックに背負い、東京の街を歩き回りました。しかもその日は台風。雨に打たれながらの訪問は、なかなか骨の折れるものでした。
約束していたのに当日キャンセル。
最初は前向きだったのに、途中で条件が変わる。
「革は自社の高級革を使ってほしい」と言われ、方向性の違いから辞退したこともありました。
最後に残った会社も、詳しく話を聞くと着物向け専門のバッグ製造請負会社。
悪くはないけれど、私たちが目指すものとは少し違う。
東京出張は、ほとんど成果を得られないまま終わりました。
けれど、不思議と「やめよう」とは思いませんでした。
むしろ、「これだけ難しいということは、それだけこの選択に意味がある」という気持ちの方が強くなっていたのです。
技術を守りたい、という同じ覚悟
転機になったのは、東京都ハンドバッグ協会との出会いでした。
事務局に相談し、なんとか無理を聞いてもらい加盟企業へ情報を流していただいたところ、数は多くないながらも返答が届きました。
条件面で折り合わない会社が続く中、最後にご連絡をくださった会社の社長様の言葉が、胸に深く響きました。
「うちにも高齢ですが、熟練の縫製職人がいます。海外縫製が増える中でも、なんとか対抗してやっていきたいんです」
その一言に、私は強く心を動かされました。
業種は違っても、抱えている危機感は同じでした。
「このままでは、日本の技術が途絶えてしまうかもしれない」
「それでも、まだ諦めたくない」
後日、実際に会社を訪ね、社長様や職人さんと直接お話をさせていただきました。
年齢を重ねた手、使い込まれたミシン、静かな作業場の空気。そこには、長年積み上げてきた誇りがありました。
その場で私は確信しました。
この方たちと一緒に、K-iwamiのバッグを作りたい。
これは取引ではなく、志を共にする仲間との出会いでした。


(Google提供・工場写真と始澤バッグ代表の始澤社長)
K-iwamiのバッグは「技術のかたまり」
K-iwamiのバッグは、ただのファッションアイテムではありません。
一針一針に、職人の経験と感覚が込められています。
縫い目の美しさ。
形の安定感。
長く使っても崩れない仕立て。
それらはすべて、効率だけを追い求めた結果ではなく、人の手が積み重ねてきた時間の結晶です。
コストやスピードを優先するなら、別の選択肢はいくらでもあったでしょう。
けれど私たちは、あえて遠回りに見える道を選びました。
なぜなら――
私たちが作っているのはバッグであると同時に、「日本の技術の未来」だからです。
手にした人の、その先へ
バッグを手にする方が、縫製工場のことや職人さんの顔を知る機会は多くないかもしれません。
それでもいいのです。
ただ、
「なんだか使い心地がいい」
「長く使いたくなる」
そう感じていただけたなら、その奥にある職人の仕事は、確かに伝わっています。
K-iwamiのバッグは、私たちだけでは作れません。
支えてくれる職人さんがいて初めて、かたちになります。
これからも私たちは、効率だけでは測れない価値を信じ、
職人さんと共に、技術の灯を未来へつないでいきます。
それが、K-iwamiのバッグに込めた、変わることのない想いです。